新しいカラーフィルムがまた1本出た。表向きはそうだ。箱を開けると、中にはすでに市場に出回っているエマルジョンが入っている。インディーのカラーフィルムが抱える小さな事情が、今回もそのまま表に出た。

Optik Oldschoolが出した新しいフィルム

Optik Oldschoolはアメリカの小さなフィルムブランドだ。自社工場を持つ会社ではなく、よそで作られたフィルムを自分たちのやり方で手直しし、箱に詰めて売る側に近い。今回彼らが出した新製品がOptiColour 200。ISO 200/デイライト/C-41/36 EXPの35mmカラーネガフィルムである。最初の出荷は120(中判)で、2025年6月に€9.90ほどで始まり、35mm 36 expの箱が2026年に本格的に出回る流れだ。

車のサイドミラー越しに映る橋の風景。曇り空とシアン寄りの中間調が印象的なOptiColour 200のサンプル。
OptiColour 200のサンプルカット。曇りの日、運転中に。シアン側に少し寄るトーンが見える。© Optik Oldschool.

中身はORWO Wolfen NC200

箱のデザインは新しいが、エマルジョンの正体はすでに市場に出ているものだ。InovisCoat GmbHが作るカラーネガ。それがすなわちORWO Wolfen NC200である。

ここで名前の関係を先に整理しておきたい。ORWOは「ORiginal WOlfen」の略で、もとは東ドイツ・ビッターフェルト=ヴォルフェンのある工場から始まったブランドだ。1994年に元のORWO社は破産し、ブランドと一部の資産がいくつもの手を経て、最終的にドイツ・モンハイム・アム・ラインのInovisCoat GmbHへと流れた。InovisCoatはカラーエマルジョンの塗布ノウハウを持つ小さなコーティングメーカーで、2020年にイギリス系の実業家Jake SealがInovisCoatと東ドイツ系の映画フィルム会社FilmoTecの両方を買収し、現在のORWO Wolfenのラインを本格的に動かし始めた。

つまり、いま市場に出回っているORWO Wolfenのカラーフィルムは、旧東ドイツのORWO工場の直系ではなく、InovisCoatによる新しいコーティングだ。同じ塗布ラインから出る同じエマルジョンが、誰のブランドの箱に入るかによって名前だけが変わる。

同じエマルジョン、4つの名前

現在、同じInovisCoat NC200のエマルジョンが、少なくとも4つの名前で売られている。

この4本のフィルムを同じ条件で露光し、同じ薬品で現像すれば、結局同じ結果になる。違うのは箱の色と価格だけだ。

曇った通りでフードをかぶった女性を正面から撮ったポートレート。肌のトーンが柔らかく出て、背景の冷たいグレーと対比をなしている。
曇りの日のポートレート。NC200系らしい落ち着いたスキントーン。© Optik Oldschool.

Optikが手を加えたただひとつ、ベースの色

では、Optikが手を加えたのはどこか。Optikが明かした違いはひとつ。ベースカラーだ。

元のInovisCoat NC200のベースは、わずかに緑がかった(greenish base)状態になっている。スキャナーで読み込むとこの緑がカラーキャストとして乗り、後処理の手間が増えるという評価がずっとあった。Optikはこのベースを、一般的なカラーネガに使われるオレンジマスクのベースに替えてコーティングを依頼した。一般的なC-41ワークフローの自動ホワイトバランスや反転プロファイルに、よりなじむ1本になったわけだ。

化学的には同じエマルジョンである。ただ、スキャンと後処理での手間のかかり方が違う。本家NC200の緑のベースが好きで使う人もいれば(自分でいじって出すトーンが気に入っているという人たち)、それを煩わしいと見る人もいる。Optikが狙ったのは後者だ。

コロンビア川峡谷の山と川。薄い霧と雲がかかり、中間調が落ち着いて出ている。
OptiColour 200の風景サンプル。空のシアンと川のミドルグレーがひとつのトーンにまとまる。© Optik Oldschool.

スペックと価格、発売スケジュール

価格帯はインディーのカラーネガの平均に近い。コダックGold 200とPortra 400の定価が上がり、インディーカラーの価格がふたたび魅力的に見える時期と重なった。

ORWO Wolfenカラーラインの進化

OptiColourの正体を整理したついでに、ORWO Wolfenの現在のカラーラインも一緒に押さえておきたい。同じInovisCoatの塗布ラインを少しずつ改良してきた流れがある。

興味深いのは、NC400の後継が新しいISO 400ではなく、むしろ1段遅いNC200だという点だ。インディーのカラーフィルムが主に屋外のデイライトや風景、ポートレートに使われる流れを反映した判断だろう。OptiColourがあえて200から始めた理由も同じ文脈にある。

暗いバーの店内。天井には鹿の剥製と看板が見え、タングステン照明の下で全体に暖かいトーンに出ている。
タングステン光源の下のOptiColour 200。デイライトバランスのフィルムの限界をそのまま見せる暖かいキャスト。© Optik Oldschool.

インディーカラーフィルムのOEM構造

全体を見渡すと、カラーネガフィルムの現実があらためて見えてくる。新しいカラーフィルムを一から設計して作れるところは、世界で5本の指に収まる。コダック、富士フイルム、ORWO Wolfen/InovisCoat、そして映画フィルムを一般用に切り分けて売るいくつかの小さな会社。それで終わりだ。

このうちInovisCoatは、自社ブランドとOEMを同時に回す小さなコーティング会社である。KONO!、Lomography、Optikのようなブランド会社は自前の塗布ラインを持たないので、結局同じInovisCoatのラインに並ぶ。そこでベースの色や箱のデザイン、価格帯といった最後の仕上げだけを自分たちのやり方で手直しする。だから同じエマルジョンが4つの名前で出回る光景が、自然に生まれる。

この構造自体は新しいものではない。1990年代には富士の一部のフィルムが他社のラベルで出回り、AGFAのカラーも似た道をたどった。インディーのカラーフィルムが増えているいまの光景は、実のところ市場が大きくなったというより、同じ小さな塗布ラインに並ぶラベルが増えているということに近い。

だからOptiColour 200を買う前に、一度は自問してみたい。同じNC200で、緑のベースとオレンジのベースのどちらが自分のワークフローに合うのか。どちらもNC200であることは変わらない。ラベルの違いで生じた価格差がそれだけの違いに見合うのかは、1本ずつ撮ってみてはじめて答えが出る。

浜辺の砂の上、小さな焚き火のそばで手を伸ばす人。熾火の暖かいトーンと砂のグレーが釣り合っている。
夕暮れどきの焚き火のカット。低光量/暖かい光源でのNC200のトーン。© Optik Oldschool.

まとめ

参考資料:PetaPixel「Film Friday: Optik OptiColour Is a New Color Film That Goes By Many Names」(2026.06.05)、Optik Oldschool公式、ORWO Wolfen / InovisCoat、KONO!/Lomographyの公式ラインナップ。本文で使用した写真はすべてOptik Oldschoolの公開資料で、© Optik Oldschoolの表記を推奨する。韓国での輸入・流通情報は別途確認が必要。