「ロモグラフィーのカメラがみなそうであるように、MC-Aも『ピントを合わせるな』ではなく『ピントを気にするな』の側にいる。ただ今回は、その役目をLiDARが代わりに担う。」

2025年10月、ロモグラフィーが新しい35mmコンパクトを発表した。名前はLomo MC-A。ロモのカタログの中では見慣れた2文字で、LC-Aの隣にMC-Aが並ぶ構図だが、中の仕組みはかなり違う。MC-Aはロモグラフィー初の35mmオートフォーカスカメラだ。測距方式はLiDAR。小さな点光源が被写体に当たって戻ってくるまでの時間を測り、距離をつかむ。露出はISO 100から3200まで自動で、シャッター優先や絞り優先といったモードはない。手に持って、片手で押す。

変化:初めて入ったオートフォーカス

レビュアーたちがそろって挙げる第一印象は二つ。ひとつはAFが意外に正確だということ。ある媒体は4本撮るあいだにピントを外したカットはほとんどなかったと書き、別の媒体は、約50cm以下の近距離を除けばすばやくロックがかかると述べた。もうひとつはISO 3200までオート露出が対応する点だ。ロモの旧LC-A系がISO 1600で止まっていたことを思えば、一段上がったことになる。暗いところで手持ちの自由が利くようになった。

ボディは小さくて、ずしりと重い。メタルの外装に革のパターン。片手に収まるサイズに、小さな液晶窓がはめ込まれている。シャッターを押すと、LiDARが点々と光を放つ。暗いカフェでシャッターを押せば、その光が見えるほどだ。それが一つ目の弱点につながる。

Lomo MC-Aの側面のディテール
Lomo MC-A
Lomo MC-Aの上面のディテール
Lomo MC-A

つまずき:聞こえるAF、迷うLiDAR

AFの作動音が大きい。正確に言えば、LiDARの測距自体は無音だが、レンズ内のモーターが動く音がよく聞こえる。あるレビュアーは「2026年の技術なら、もっと静かであるべきだった」と書いた。静かな室内やカフェ、ギャラリーでシャッターを一度押せば、隣の人が振り向く。キャンディッドスナップの「ひそやかさ」は消えてしまう。

二つ目はLiDARの限界だ。一点測距なので、網越し、ガラス窓の手前、密集した枝のあいだといった込み入った場面では、意図しない背景にピントが合う。もう一度狙い直してロックすれば解決するが、その「もう一度」の1秒が、ストリート写真の決定的瞬間を逃させる。ロモ流の「向けて押すだけ」とはあまり相性のよくないところだ。

Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例
Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例

そして、最初のロットの巻き上げ機構

レビューが指摘するもっと重い問題は別にある。フィルム巻き上げ機構の欠陥だ。量産前の出荷ユニット(pre-production)では、巻き戻しのテンションが緩んで裏ぶたを開けたときに光漏れが起きる例が報告された。量産ユニットに移ってからも、巻き上げレバーを最後まで回したのに次のコマへ進まない、シャッターが押せない、2コマがわずかに重なって写る、といった事例が複数のユーザーから出ている。

あるアメリカの写真家は、MC-Aで15本撮ったあと「フィルムが噛んで何枚もカットを失った」として返金を受けたと、自分の記事に書いた。別のレビュアーは、2台とも同じパターンの巻き上げトラブルが出たと書いている。つまり一部の個体の偶然というより、初期ロット全体のメカニズムの欠陥に近いパターンと読める。

ロモグラフィーはLC-A系について、2年保証と無償修理または交換の方針をとっている。MC-Aも同じ方針の対象なので、欠陥が確認されれば交換や返金は可能だ。ただ、この記事を書いている時点(2026年5月)まで、ファームウェアの更新や巻き上げ機構の公式な改訂の発表は特になかった。後続の生産バッチが同じ部品でつくられているのか、それともひっそり変わったのかは、まだはっきりしない。

Lomo MC-Aの背面のディテール
Lomo MC-A

同じパターン、違うカメラ

「いい最初のアイデア、ぐらつく基本のメカニズム」というこのパターンは、実はMC-Aだけの話ではない。2022年のLomoApparatは、21mmの広角という魅力的なアイデアを、シャッター1/100sとf/10の固定露出で縛ってしまったせいで、曇りの日にはほとんど使えなかった。2024年のLomomatic 110は110フォーマットをよみがえらせたコンパクトだったが、巻き上げ機構がときどき空のコマを残し、シャッターボタンがISO/Bulbボタンと近すぎて、うっかり押し間違えることがよくあった。

ロモはこれらのカメラの「基本性能の問題」に対して、ファームウェアやハードウェアの修正を別に出してはいない。その代わり、毎年カラーの特別エディションを出す。ApparatのAlexanderplatz、Lomomatic 110のNocturneといったものだ。外装は変わる。中身は同じだ。

ロモ流カメラの魅力は「完璧でないことへの寛容さ」にある。ただ、その寛容さが「基本のメカニズムがぐらついてもかまわない」にまで及んでいいのかは、別の話だ。

では、買うか、待つか

MC-Aの強みははっきりしている。初の35mm AF、ISO 3200まで対応する自動露出、片手に収まるメタルボディ。「ロモ流の一枚」にオートフォーカスが加わった最初のカメラという意味がある。ただ、その意味を受け入れるには、巻き上げの信頼性、AFの作動音、LiDARの限界という三つのつまずきも一緒に引き受けなければならない。

いま(2026年春)の時点で買おうか迷っているなら、もう一度待つほうが合理的かもしれない。後続のバッチで巻き上げ部品がひっそり改良される可能性があるし、ファームウェアの更新が遅れてでも出るかもしれない。韓国市場の正規輸入ルートが安定する前なので、返金や交換の手続きも面倒になりうる。そして決定的なのは、ロモ流のカメラは発売直後の価格より、半年後のほうがたいてい落ち着いているということだ。

それでもこのカメラは、ロモが「デジタルとの距離を少しずつ縮める最初の一歩」を踏み出した1台として記憶されそうだ。AFという言葉がロモのカタログに初めて入ったという事実は、つまずきがあったとしても、記録しておくべき変化である。

Lomo MC-Aのフラッシュとビューファインダーのクローズアップ
Lomo MC-A
Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例
Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例
Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例
Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例
Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例
Lomo MC-Aの作例
Lomo MC-A 作例