フィルムをやっている人も、やっていない人も、一度はこう思ったことがあるはずです。「あの人、なんでわざわざフィルムを使うんだろう?」
最初の記事に何を書いてみようか悩んだ末に、結局、自分がなぜフィルムを使っているのかという話をしてみようと思います。
ニコンFM2と銀色の憧れ
僕が初めてフィルムカメラに惹かれたのは、友だちが持ち歩いていたニコンFM2のせいでした。当時はコンパクトデジカメが流行っていた時代で、背景をぼかせるフィルムカメラの写りもよかったし、銀色の機械式フィルムカメラがとにかくかっこよかったんだと思います。
それに昔は(年寄りくさい言い方ですが)、カメラそのものがいまみたいに気軽にさわれる物ではなくて、なんだか高価で特別な感じがあったじゃないですか。だから自然と、カメラ、とくにフィルムカメラへの憧れのようなものが生まれたんだと思います。
龍山で握らされたD80
写真を始めるときも、本当はニコンFM2で始めたかったんです。でも龍山(ヨンサン)の電気街にカメラを買いに行ったら、店の社長さんが「もうフィルムなんて使いませんよ、いまはデジタルの時代です」と言って、そのままニコンD80を握らせてくれました。
当時の龍山はおっかない場所だったので、僕はおとなしくデジタルで写真を始めることになりました(笑)。
ふたたびフィルムへ、F3
それから10年くらいたったころ、ふと色味のことが気になり始めたんです。「フィルムって、もともとどんな色だったんだろう?」という疑問でした。その好奇心からニコンF3を一台迎えて、本格的にフィルムを始めることになりました。
フィルムを使ってみていちばんよかったのは、仕上がりそのものよりも、その過程でした。撮るときの感覚、機械にさわる手ごたえ、そして撮ってすぐには見られない、あの待ち時間までです。
待つという時間旅行
デジタルは撮ればすぐ見られますが、フィルムはそうはいきませんよね。現像してスキャンまでしないと結果が見られないので。望んでも望まなくても、物理的な時間が流れなければならない感じがあります。だからフィルム写真を受け取る瞬間は、妙に時間旅行をしているような気分になるんです。
昔は自分で現像してスキャンもたくさんしましたが、最近は正直、人にやってもらうのがいちばん楽でいいと思っています(笑)。僕はオーストラリアに住んでいるので現像とスキャンの料金が本当に高いんですが、韓国にいたら毎回出していたと思います(笑)。それでも、自分で現像してスキャンしながら一枚ずつ写真をつくっていく過程そのものも、けっこう楽しいものです。
古い機械の中の時間
古いフィルムカメラを使うのも、似たような感覚です。アンリ・カルティエ=ブレッソンが使っていたカメラを自分で使ってみることもそうだし、50〜60年前につくられたカメラを見ると「この時代にこんなことができたの?」と思ったりもします。ただの機材なのに、時間の感覚が一緒に詰まっている感じがあるんです。
ときどき、古いカメラの中に誰かが撮って忘れたフィルムを見つけることもあります。これは本当に大げさではなく、時間旅行をしている気分です。現像してみると、誰かの昔の一日がそのまま入っているんですから。
僕はただ、フィルムが好きです
僕がフィルムを使う理由は、ただ流行を追いかけているからではないと思います。フィルムカメラがくれるあの遅さ、アナログならではの空気、そして写真が一枚できあがるまでの過程と待ち時間。その中に詰まっている時間のせいなんだと思います。
もしかすると僕が好きなのは、フィルムそのものでもあるけれど、そこに込められたアナログのゆとりと、遅さの美学なのかもしれません。
みなさんは、どうしてフィルムが好きですか?