「消えていくものをつなぎとめること。今月の展示リストを並べてみると、その一文が何度も重なって読める。」
8月の写真展には、共通する顔がある。消えていく場所、消されていく共同体、忘れられていく記憶。1世紀を記録した写真家の生誕100周年回顧展が光陽(クァンヤン)で開かれ、再開発地域の廃屋と残された物語を追う展示がソウルと世宗(セジョン)で並ぶ。そのかたわらで、釜山と仁川の国際写真祭が夏を埋める。締め切りの近いものから書いていく。
今週で終わる
第9回仁川開港場国際写真フェスティバル、〈潮流の向こう Beyond the Tide〉
仁川・開港場一帯(韓中文化館・華僑歴史館・サンサン・プラットフォーム・クァンドン・ギャラリーなど)。7.25 – 8.5。
海洋都市という条件から出発し、気候危機、海洋汚染、生物多様性へと視野を広げていく国際写真祭。会場はひとつではなく、開港場の街並みそのものが舞台だ。近代建築のあいだを歩きながら見る構成なので、午後遅くに行って日が暮れるころまで歩くルートをすすめたい。
Gil Fine Art(길파인아트)、〈RE-Image:写真の錬金術〉(사진의 연금술)
城南アートセンター ギャラリー808。7.31 – 8.7。
写真を平面のイメージにとどめず、プリントの物質性、オブジェ、インスタレーションへと広げた同時代のファインアート写真展。「写真とは何か」を、印画紙の外側からあらためて問う。
Kim Gi-chang、〈時間の表面〉
BRT小さな美術館(世宗)。7.29 – 8.9。
再開発地域の廃屋と、長く使われてきたモノをモノクロで記録した。壁紙がはがれた跡、手垢の残るドアノブ。人が去ったあとにも残る表面が、時間の代わりに語る。
来週まで
第3回ドキュメンタリー写真フェスティバル、〈そこに、残された物語〉
Space22(ソウル)。7.24 – 8.14。
Park Jong-myeon、Byeon Seong-jin、Lee Dong-geun、Lee Jae-gap、Jang Young-jinの5人の写真家が、消えていく場所と共同体を記録した。ドキュメンタリー写真が長く続けてきた仕事を、正直に見せる場だ。このリストではLee Jae-gapの名前にもう一度出会う。大邱で開かれる個展と並べて見ると、ひとりの写真家のふたつの顔が見えてくる。
第23回写真批評賞 創作賞受賞展:Kim Hyun-seok、Lee Jae-gyun
Gonggan Pulsup(ソウル)。8.4 – 8.14。
開発によって変わっていく都市を扱うKim Hyun-seokと、戦争と歴史の記憶を扱うLee Jae-gyun。新進写真家ふたりの受賞展が今日始まる。
第10回釜山国際写真祭、〈人 人〉
釜山港国際展示コンベンションセンター・ササン・インディステーション。7.29 – 8.18。
今年で10回目。人間と時代をテーマに、国内外の写真家の作品を集めた大規模な国際写真祭だ。会場がふたつに分かれているので、時間はたっぷりとっておきたい。釜山まで行くなら、海雲台(ヘウンデ)のGoEunギブソン写真美術館(ラルフ・ギブソン常設)まで組み合わせると、充実した一日になる。
8月をまたいで
Lee Jae-gap、〈角 CORNER〉
Artspace Lumos(大邱)。7.28 – 8.22。
長く社会派ドキュメンタリーを撮ってきた作家が、カメラを自分のほうへ向けた。記録から記憶へ、外から内面へと移った新作だ。上のドキュメンタリー写真フェスティバルとあわせて見ると、ひとりの写真家がいまどこに立っているのかがはっきりする。
Lee Kyung-moのまなざし、〈消えゆくものの前で、写真で残す〉
光陽文化芸術会館 第1・第2展示室。8.1 – 8.31。
Lee Kyung-mo生誕100周年記念展。韓国近現代史の激動と、そのなかを生きた人々の暮らしを写した記録写真である。100年前に生まれたひとりの人間が残した写真を、100年後に見るということ。今月の展示のなかで、いちばん長い時間を渡ってきた写真たちだ。8月のあいだずっと開いている。
ティエリー・アルドゥアン Thierry Ardouin、〈Seed Stories〉
GoEun写真美術館(釜山)。4.23 – 8.30。
世界各地で集めた種子を顕微鏡で撮影し、1点ずつ肖像のように立たせた。全87点。爪より小さな種子が、画面の中では彫刻のように見える。春に始まって夏の終わりまで続く展示なので、釜山国際写真祭と同じ日に組み合わせやすい。
まわり方のメモ
ソウルはSpace22(8.14)とGonggan Pulsup(8.14)が同じ日に閉じる。どちらもドキュメンタリー系なので、1日にまとめて回っても流れが途切れない。釜山は写真祭(8.18)とGoEun写真美術館(8.30)をいっしょに。大邱はLumosの1か所だけだが、8月22日までなので余裕がある。仁川・開港場は8月5日までなので、明日が最終日だ。
リストを見直すと、ほとんどが消えていくものについての展示だ。再開発でなくなる町、忘れられる共同体、100年前の顔、爪ほどの種子。写真とは結局、残すことなのだと、8月の展示が並んで語っている。